アドリエンヌ・ルクヴルールという女性を知っていますか?
その女性は1720年頃に活躍したフランスの大女優です。

その大女優を主役として、フランチェスコ・チレアが「アドリアーナ・ルクヴルール(Adriana Lecouvreur)」というイタリア語のオペラを作曲しました。

今回はその「アドリアーナ・ルクヴルール」のあらーいあらすじをご紹介します。

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嫉妬に狂う女の戦い

第一幕

本番前の劇場の舞台裏。
役者やスタッフが賑やかに準備をしています。

ブイヨン公爵はデュクロという女優のパトロンです。
そのデュクロが誰かに手紙を書いている。と聞いたブイヨン公爵はなんとかしてその手紙を手に入れようと企みます。

一方、アドリアーナはザクセン伯爵のマウリツィオと恋仲です。
本番直前に現れたマウリツィオとアドリアーナは互いの愛を確認し、終演後に会う約束をします。
そして、アドリアーナはマウリツィオにスミレの花束を渡して舞台へ。

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その頃、ブイヨン公爵はデュクロが書いた手紙を手に入れました。
その内容は「ブイヨン公爵の別荘でデュクロとマウリツィオが密会をする。」というようなものでした。

でもこの手紙の真意はそうではありませんでした。
実際はマウリツィオが政治関連の話をブイヨン公爵夫人にするためにデュクロが仲立ちをしたのです。

そうとは知らないブイヨン公爵はその密会を邪魔してやろうと、同じ時間に同じ別荘でパーティーを開くことにします。

マウリツィオはアドリアーナとの終演後の約束を断り、ブイヨン公爵夫人との密会へ向かうことを決めます。

第二幕

ブイヨン公爵の別荘。
ブイヨン公爵夫人はマウリツィオの到着をイライラしながら待っています。
彼女はマウリツィオを愛しているのです。

そこへ胸にスミレの花束をつけたマウリツィオが現れます。
ブイヨン公爵夫人は「遅れてきた理由はそのスミレの花束がものがたっている。」と嫉妬をしています。
マウリツィオは「これは貴方にプレゼントするためのものです。」とブイヨン公爵夫人にスミレの花束を渡します。

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そうこうしている間にブイヨン公爵やパーティーに呼ばれたアドリアーナなどがやってきます。
ブイヨン公爵夫人は見つかったら大変なので別の部屋に隠れます。

そこで隠れたと思われる愛人デュクロの捜索が始まります。
マウリツィオはアドリアーナに「隠れている女性を逃がしてくれ。その際、その女性の顔はみないように。」と頼みます。

アドリアーナは了承し、隙を見て部屋の明かりを消し、女性を逃がすことにします。
暗闇で互いに顔は見えない中ですが、二人は恋敵であることに気付き、口論が始まります。

そして、ブイヨン公爵夫人は自分の腕輪を落として逃げるのでした。

第三幕

ブイヨン公爵の館。
館には沢山の人が招かれています。
その中にはアドリアーナもいます。

ブイヨン公爵夫人はアドリアーナの声を聞いて、それが暗闇の中で会った恋敵の声だと気付きました。
本当にその女性かを確かめる為に「マウリツィオが決闘をして負傷した」と嘘をつきます。
それを聞いて失神するアドリアーナを見て確信します。

その直後、マウリツィオは元気な姿で登場。
騙されたことに気づき憤慨するアドリアーナは逃げた女性が落としていった腕輪を出します。

お互いが恋敵であることを知った二人は嫉妬の火花でバチバチです。
嫌みの言い合いの様になりますが、この日の女の戦いはアドリアーナの勝利。
負けたブイヨン公爵夫人は復讐に燃えるのでした。

第四幕

アドリアーナの家。
嫉妬の怒りに負けて具合の悪くなったアドリアーナは自宅で療養しています。
そこへ舞台仲間たちが見舞いの品々を持ってやって来ます。

マウリツィオからも小箱が届きました。
何か嫌な予感を感じながらもアドリアーナはその蓋を開けました。
するとそこには枯れて嫌な香りのするスミレの花束が入っていたのです。
かつて自分が渡したスミレの花束が突き返されたことにアドリアーナは怒り悲しみます。

そこへマウリツィオが現れます。
怒っているアドリアーナですが、マウリツィオの愛の言葉、プロポーズを聞き喜びに震えます。

しかし、急に具合が悪くなります。
実はあのスミレの花束には毒がしかけられていたのです。
仕組んだのは恋敵であるブイヨン公爵夫人。

それに気付いた時にはもう何の手立てもなく、アドリアーナはマウリツィオの腕の中で天に召されるのでした。

フランチェスコ・チレア

フランチェスコ・チレア(Francesco Cilea)は1866年から1950年に生きたイタリアの作曲家です。
チレアが作曲した有名なオペラは「アドリアーナ・ルクヴルール」の他には「アルルの女(L'Arlesiana)」などがあります。

チレアはフランスオペラに影響を受けた為、その作品には優雅で美しい旋律が溢れています。

アドリエンヌ・ルクヴルール

アドリエンヌ・ルクヴルールは1692年から1730年に生きたコメディ・フランセーズの女優です。

コメディ・フランセーズとは、フランスの代表的な劇団の名前です。
またその劇団が主に活動していた劇場の名前でもあります。

アドリエンヌが1730年に急死した際、世間では「恋敵であったブイヨン公爵夫人に毒殺されたのだ」という噂が広まりました。
でも、噂は噂。自然死だったという説もあります。

アドリエンヌが素晴らしい女優だったこと、三角関係の末の毒殺という悲劇的な最期などが語り継がれ、このオペラの誕生に繋がったのです。

劇場の裏側だからこそ

大女優の話というだけあって、このオペラはとても華やかです。
本番が始まる前の舞台裏の賑やかさ、きらびやかな衣装、幕が上がった瞬間からドキドキします。

第三幕のバレエも見所です。
そのバレエはギリシャ神話の「パリスの審判」をもとにしています。

その後のアドリアーナとブイヨン公爵夫人のやりとりでは「捨てられたアリアドネ」「フェードル」など、当時有名であった演劇の名前またはその中のセリフが出てきます。
それらがどんな話であったかを詳しく知っていると、よりこのオペラが楽しめると思います。

歌詞がわかれば楽しさは何倍にも増しますので、より深く楽しみたい方はイタリア語の勉強もオススメです。

オペラDVDやオペラCDなどではもちろん、機会があれば是非生で一度アドリアーナ・ルクヴルールを楽しんでみて下さい!

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