『ばらの騎士(薔薇の騎士/Der Rosenkavalier)』は、リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss/1864-1949年)を代表するオペラの一つです。
シュトラウスは、この他には『サロメ』『エレクトラ』『ナクソス島のアリアドネ』『アラベラ』『カプリッチョ』などのオペラも書いています。
ドイツの後期ロマン派を代表する作曲家で、オペラの他に交響詩や歌曲の傑作も数多く残し、指揮者としても活躍しました。
ここでは『ばらの騎士』のあらすじを整理したいと思います。
主な登場人物
元帥夫人がオクタヴィアンとの別れを決意し、オクタヴィアンとゾフィーが結ばれたところでオペラは結びとなります。
1.元帥夫人・・・オーストリア陸軍元帥の夫人で、青年貴族のオクタヴィアンと愛人関係にある。
2.オクタヴィアン・・・元帥夫人の愛人。最終的に元帥夫人と別れゾフィーと結ばれる。
3.オックス男爵・・・元帥夫人のいとこで傲慢な貴族。ゾフィーと婚約するが、破談となる。
4.ゾフィー・・・お金持ちの商人の娘。オックス男爵と婚約するがそれを破棄し、最終的にオクタヴィアンと結ばれる。
『ばらの騎士』あらすじ第1幕
舞台はマリア・テレジア治世下のウィーン、元帥夫人の寝室
「元帥夫人と愛人オクタヴィアン」の恋愛
元帥夫人(マリー・テレーズ)の夫は遠くに出掛け留守にしています。
そしてその間に、元帥夫人とその愛人オクタヴィアン(ロフラーノ伯爵)は愛の一夜を過ごしてます。
舞台はその一夜明けたところから始まります。
舞台が開けると元帥夫人とオクタヴィアンは愛を語り合います。
オックス男爵の訪問
二人が朝食をとっていると、誰かがやってきます。
夫が帰ってきたかと二人は慌てますが、その訪問者は元帥夫人のいとこのオックス男爵でした。
隠れたいオクタヴィアンは女装(小間使いの格好)し、来客に紛れて外に出ようとします。
しかし、オックス男爵は女装したオクタヴィアンを一目見て気に入り、捕まえ、口説きだしてしまいます。
仕方がないので元帥夫人はオックス男爵に「彼女は小間使いのマリアンデルだ」と嘘の紹介をします。
「ばらの騎士」にオクタヴィアンを指名
オックス男爵はお金持ちの商人ファーニナル家の娘と婚約したことを話し出します。
そしてオックス男爵は元帥夫人に「ばらの騎士」(婚約申し込み時の使者)を紹介してほしいと頼みます。
そこで元帥夫人は「ばらの騎士」としてオクタヴィアンを推薦します。
オックス男爵はそれに同意しますが、そのオクタヴィアンの絵姿と目の前にいるマリアンデルが余りに似ていることに驚きます。
その後、来客が多く訪れ、それに紛れてオクタヴィアンはようやく立去ります。
来客が次々と
来客が次々と訪れてきます。
ゴシップ屋のヴァルツァッキとアンニーナは、オックス男爵への売り込みに成功します。
またオックス男爵は公証人に結婚契約書を作らせ、そこに「莫大な持参金を持ってこさせる契約を含ませろ」と要求し、強引に契約書を作成します。
やがて元帥夫人は教会へ行くことをつげ、オックス男爵も立ち去ります。
元帥夫人とオクタヴィアンの切ない二重唱
来客はいなくなり元帥夫人とオクタヴィアンは二人きりとなります。
元帥夫人は自らの年齢の重なりを感じ、若いオクタヴィアンとの別れがいずれは来るだろうと予感し悲しみます。
それに対しオクタヴィアンはいつまでも元帥夫人を愛していると情熱的に語ります。
やがて二人の思いが重ならないまま、別れのキスもなしにオクタヴィアンは去り、元帥夫人がそれに悔いているところで幕となります。
『ばらの騎士』あらすじ第2幕
ファーニナル家の客間
「ばらの騎士」オクタヴィアンの登場
ファーニナル家は婚約者を迎える為に準備で忙しくしています。
そこに「ばらの騎士」(婚約申し込み時の使者)であるオクタヴィアン(ロフラーノ伯爵)が登場します。
オクタヴィアンはオックス男爵の婚約者ゾフィーに婚約の儀式として「銀のばら」を渡します。
そこで結婚について健気に話すゾフィーにオクタヴィアンは恋をしてしまいます。
オックス男爵の無礼な振る舞い
やがてオックス男爵が登場しますが、彼の無礼な振る舞いにゾフィーは戸惑い、オクタヴィアンは怒りを覚えます。
困ったゾフィーはオクタヴィアンに助けを求めます。
オクタヴィアンは二人のために何とかしようと答え、二人は喜びの中で抱き合います。
オックス男爵がオクタヴィアンに刺される
そこに1幕でオックス男爵に雇われたヴァルツァッキとアンニーナが現れ、オックス男爵に二人のことを告げ口します。
ゾフィーは「結婚したくない」と言いますが、オックス男爵は全く相手にしません。
それに怒ったオクタヴィアンはオックス男爵に向かって剣を抜きます。
オックス男爵も応戦しますが、あっさりとやられてしまいます。
刺されたオックス男爵は重傷でないのにかかわらず、「死ぬ」と叫び騒ぎ立てます。
オクタヴィアンは騒動に謝罪し、その場を立ち去ります。
オクタヴィアンの恋人奪取計画
オクタヴィアンは、オックス男爵が自らの女装姿である「マリアンデル」を気に入っていたことを利用し計画を立てます。
マリアンデルとしてオックス男爵に求愛の手紙を送り、オックス男爵をはめようとします。
手紙を受け取りオックス男爵が喜び有頂天になっているところで、2幕は閉じます。
※オックス男爵からの待遇に不満を持っている手下のヴァルツァッキとアンニーナは、3幕でこの計画に参加しオックス男爵を裏切ります。
『ばらの騎士』あらすじ第3幕
第2幕と同日の居酒屋
オックス男爵を騙す準備
居酒屋ではオックス男爵を騙す準備がはじまっています。
オックス男爵を裏切ったヴァルツァッキとアンニーナが、その指揮をとっています。
オックス男爵を陥れる仕掛け
しばらくするとオックス男爵とマリアンデルに女装したオクタヴィアンが登場します。
オックス男爵はマリアンデルを口説きますが、やがて下準備した仕掛けが始まりオックス男爵はそれに驚きます。
続いて変装したアンニーナが子連れで登場し、「オックス男爵は私の夫だ」と騒ぎ立てます。
困ったオックス男爵は警察を呼びます。
オックス男爵が策略にはまる
警察に尋問を受ける中で、オックス男爵はマリアンデルのことを「自分の婚約者であるゾフィー」だと述べます。
そのタイミングでゾフィーの父親ファーニナルが登場し「マリアンデルは自分の娘ではない」と証言します。
※ファーニナルはオクタヴィアンがオックス男爵の名を使って呼んでいた。
ここまでは計画通りでしたが、突如元帥夫人も登場します。
そして、さらにはゾフィーも登場します。
ここで次のことが明らかになります。
1.「元帥夫人とオクタヴィアンが愛人関係である」ことをゾフィーとオックス男爵が知ります。
※ゾフィーは落胆します。
2.「オクタヴィアンとマリアンデルが同一人物である」ことをオックス男爵が知ります。
元帥夫人はオックス男爵に「すべては終わった」と語り、退場を促します。
オックス男爵は敗北を悟り、退場します。
元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーの3重唱
舞台は元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーの3人となります。
元帥夫人は愛の終わりを悟り、二人の愛を見守ります。
それぞれの複雑な心情の中で、美しい3重唱が歌われます。
元帥夫人はその場を静かに去りますが、二人はそれに気づきません。
オクタヴィアンとゾフィーはお互いの愛の喜びを語り合い全幕は閉じます。