みなさんは「ドン・ファン」という男を知っていますか?
17世紀スペインのとある伝説の主人公の名前です。
この伝説はいろんな芸術家に興味を持たれ、沢山の戯曲や管弦楽なの題材となっています。
ミュージカル「オペラ座の怪人」にも「ドン・ファンの勝利」という演目が出てきますね。
この「ドン・ファン(Don Juan)」はイタリアでは「ドン・ジョヴァンニ(Don Giovanni)」と呼ばれています。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは「ドン・ジョヴァンニ」というタイトルでこの伝説をオペラにしました。
ここでは、「ドン・ジョヴァンニ」のあらーいあらすじをご紹介します。
遊び人の行く末…
一人目の女性
スペインのとある町でのお話し。
若い貴族のドン・ジョヴァンニは女の人が大好きな自由人です。
この日もずーっと目をつけていた騎士長の娘、ドンナ・アンナに手をつけようと屋敷に忍び込みました。
しかしアンナが抵抗した為、ジョヴァンニは諦めて逃げようとします。
騒ぎを聞きつけて追ってきた父の騎士長と決闘が始まります。
そして残念なことに、勇敢な騎士長は若いジョヴァンニに殺されてしまうのです。
アンナは騎士長を殺した男に復讐を誓います。
二人目の女性
まんまと逃げることに成功したジョヴァンニはもう次のターゲットに目をつけます。
愛しの彼に逃げられ、その彼を探しているというドンナ・エルヴィーラです。
ジョヴァンニはエルヴィーラの身の上を聞きながら近づきますが…。
実はエルヴィーラを置いて逃げたのはジョヴァンニだったのです。
エルヴィーラはジョヴァンニに気付き、思いの丈をぶちまけます。
ですが、逃げ足の速いジョヴァンニはまた上手いこと逃げてしまいます。
一人置いていかれたエルヴィーラもまたジョヴァンニに復讐を誓います。
三人目の女性
次にジョヴァンニが目をつけたのは今まさに結婚式の最中の花嫁ヅェルリーナです。
ジョヴァンニは「お祝いがしたい」と参列者もまとめて屋敷に招待します。
みんなが屋敷へ移動する間にヅェルリーナだけを連れ出そうとしているのです。
ヅェルリーナと二人きりになったジョヴァンニは彼女を口説き落とします。
彼女もその気になりますが、そこへエルヴィーラが現れてジョヴァンニの悪事を暴露します。
ヅェルリーナも騙されたことに気付き、復讐することを決意します。
騎士長の呪い
3人の女性の復讐から逃げ回るジョヴァンニの前に騎士長の銅像が現れます。
不気味に立つ銅像にジョヴァンニは「お前を夕食に招待しよう」と話しかけます。
すると、なんと銅像がこくりと頷いたのです。
その晩、ジョヴァンニが屋敷で夕食をとっていると、騎士長の銅像がやってきます。
銅像は「今度は私がお前を食事に招待する」と言って手を差し出します。
ジョヴァンニがその手を握り返すと銅像は「今までの人生を悔い改めよ」と言います。
その問いに「嫌だ」とはっきりと答えた為、ジョヴァンニは地獄へと引きずり込まれてしまうのでした。
復讐に燃えていた3人の女性らはその話を聞き、「復讐は終わった」と喜びます。
「ドン」「ドンナ」って何?
あらすじにはすべての登場人物の名前は出しませんでしたが、他にも何人か登場します。
主要な登場人物は以下の通りです。
ドン・ジョヴァンニ
騎士長
ドンナ・アンナ
ドン・オッターヴィオ
ドンナ・エルヴィーラ
レポレッロ
ヅェルリーナ
マゼット
これを見て、何か気になることはありませんか?
「ドン」「ドンナ」とはなんでしょうか?
モーツァルトの他の作品にも出てきますね。
例えば…
「フィガロの結婚」にはドン・バジリオ、ドン・クルツィオ
「コジ・ファン・トゥッテ」にはドン・アルフォンソ
「ドン」「ドンナ」とは身分の高い人に対する尊称です。
「ドン」は男性、「ドンナ」は女性に使います。
「フィガロの結婚」の曲が使われている?
モーツァルトはオペラ「フィガロの結婚」を1786年に初演しました。
それがプラハで大ヒットし、新しいオペラ制作の依頼を受けます。
そして完成したのがオペラ「ドン・ジョヴァンニ」でした。
モーツァルトは「フィガロの結婚」の成功が嬉しかったからか、「ドン・ジョヴァンニ」の第二幕の夕食の場面でフィガロのアリア「もう飛ぶまいぞこの蝶々」のメロディを使っています。
当時の聴衆も初めて聴いた時に「おっ。聴いたことある。」って思ったでしょうね。