吹奏楽の名曲シリーズ、今回はコダーイ作曲の「ハーリ・ヤーノシュ」を紹介したいと思います。
ゾルタン・コダーイ(1882〜1967)は、バルトークと並ぶ近代ハンガリーの代表的な作曲家です。
「ハーリ・ヤーノシュ」は彼の代表的作品でユーモアと明るさに富んだ音楽が印象的です。
まさに他国の支配に苦しんだハンガリーの暗い事情を明るくさせる様な音楽に仕上がっています。
同じ時期を過ごしたバルトークがナチス・ドイツ侵攻時にアメリカに亡命し故郷へ帰ることがなかった一方で、コダーイはハンガリーを離れることはありませんでした。
ハンガリーを愛し、ハンガリー人に愛され続けているのがコダーイです。
コダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」は吹奏楽で演奏されることも多くありますが、元々はオーケストラのために書かれた音楽です。
元々はオペラ作品
コダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」は1926年にブダペスト王立歌劇場で初演されたオペラで、元々は「五つの冒険」というタイトルでした。
「五つの冒険」はオペラの中でもジングシュピール(Singspiel)に分類されます。
ジングシュピールの特徴の一つは音楽と音楽の間にセリフを挟んでいることがあり、それは今のミュージカルに作りは似ていると言えます。
ジングシュピールを代表する作品としては、モーツァルトの「魔笛」が挙げられます。
ジングシュピールは悲劇的なストーリーは好まず、コミカルだったりロマンティックな内容が好まれました。
また「魔笛」でも見られるように空想的なものが登場することもあります。
内容はハンガリー版「ほら吹き男爵」
「五つの冒険」もジングシュピールらしく楽しい内容になっています。
ハンガリー版「ほら吹き男爵」とも言うべきストーリーで、「七つの頭のドラゴンを退治した」「ナポレオンに打ち勝って捕虜とした」などと嘘をついている老人(退役軍人)が主人公のオペラです。
ハンガリーでは、聞き手がくしゃみをすると、その話は嘘だという言い伝えがあるそうで、このオペラも「オーケストラによるくしゃみ」で幕を開けます。
幕が開けると老人が「かつての思い出話(すべて嘘)」をするのですが、次第に聴く者たちは熱心に話を聴きだしてしまいます。
話が終わると、聴き手が最後にくしゃみをして幕は閉じます。
「くしゃみで始まりくしゃみで終わる」楽しそうなオペラですが、残念ながら現在ではこのオペラが上演される機会はほとんどありません。
「五つの冒険」のベスト盤が組曲「ハーリ・ヤーノシュ」
今日よく演奏される組曲「ハーリ・ヤーノシュ」は、オペラ「五つの冒険」から6曲をピックアップして構成されている組曲です。
この組曲が大ヒットし今日まで演奏され続けているというわけです。
コダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」の吹奏楽の演奏
駒澤大学の演奏