吹奏楽の名曲シリーズ、今回はアーノルド作曲の「第六の幸福をもたらす宿」を紹介したいと思います。
アーノルドの「第六の幸福をもたらす宿」は吹奏楽で演奏されることも多くありますが、元々は映画音楽です。
「第六の幸福(幸運)をもたらす宿」と表記されることが多いですが、映画のタイトルは「六番目の幸福(The Inn of the Sixth Happiness)」というものです。
近代イギリスを代表する作曲家、マルコム・アーノルド
マルコム・アーノルド(Malcolm Arnold/1921年~2006年)は、近代イギリスを代表する作曲家です。
わかりやすい音楽と大編成のオーケストラが印象的で、その功績からイギリス国家からナイトの称号を与えられています。
また作曲家としてだけでなく、一流のトランペット奏者としても有名でした。
若干20歳でロンドン・フィルハーモニー管弦楽団にトランペット奏者として入団し、その後首席奏者にもなっています。
アカデミー作曲賞も受賞
アーノルドは交響曲・管弦楽曲・協奏曲も手掛けましたが、映画音楽が印象的です。
1957年に公開された映画「戦場にかける橋(The Bridge on The River Kwai)」ではアカデミー作曲賞も受賞しました。
「第六の幸福をもたらす宿」でお馴染みのこの映画「六番目の幸福」はその1年後(1958年)に公開された作品です。
中国が舞台のイギリス人女性宣教師の物語
この物語の舞台は第2次世界大戦後の中国で、実在したイギリス人女性宣教師グラディス・エイルワード(Gladys Aylward 1902-1970)が主人公です。
日本軍の侵略から中国の孤児たちを守り、安全な場所へ送り届けるグラディス・エイルワードの様子が描かれています。
この作品はアラン・バージェスの小説をもとにして映画化されました。
タイトルの由来
タイトルは中国の言い伝えからきています。
中国では人の幸福は5つあり、それは「富、長寿、健康、道徳、安らかな死」だそうです。
そして最後にもう1つ「人それぞれの幸福」が存在していると言われており、それがタイトルの「六番目の幸福」というわけです。
吹奏楽として編曲されている
「六番目の幸福」は吹奏楽用として編曲されており、有名なものとしては瀬尾宗利さんによるものがあります。
これは3楽章からなっています。
音楽が使われたシーンを知ると音楽の感じ方も変わってくると思いますので、ここでは簡単にそのシーンを紹介したいと思います。
第1楽章/ロンドン・プレリュード
主人公が映画の冒頭でロンドンのヴィクトリア駅に到着した場面で流れます。
後半でこれからの困難な物語を予感させる音楽になりますが、全体としては希望に満ちた音楽が印象的です。
第2楽章/ロマンティックな間奏曲
主人公が中国の山奥でリン・ナンと出会ったときに流れる音楽です。
中国の山奥の風景が出てきそうな音楽と、リン・ナンの性格を描写したような優しくて穏やかな雰囲気が感じとれます。
第3楽章/ハッピー・エンディング
第1楽章で使われた希望のテーマが再び流れます。
また山道での困難や、子供たちの足音も音楽で表現されています。
最後は壮大な音楽と共にクライマックスを迎えます。
アーノルド「第六の幸福をもたらす宿」の吹奏楽の演奏
堺市音楽団第15回定期演奏会より第3楽章「ハッピー・エンディング」